*麗しのスローライフ 

ノスタルジックな思いに身をまかせる スローライフ

Slow Life スローライフという言葉が広まって久しい昨今ですが、スローライフすなわち田舎での生活がもてはやされているのはどうしてでしょう? 

何十年か前には、むしろ都会がもてはやされ、誰もが東京へ出るという夢を持っていた時代もあったはずです。

きっと、それは高度経済成長が終わって長い時間が経過し、バブル経済もはじけて工業国・経済大国といった日本のアイデンティティが崩れ去ったことが一因でしょう。

お店に売られているもので、メイドインジャパンは高級品だけ。

庶民的な製品はほとんどが中国製・台湾製ばかりで、最近ではインドネシア製・タイ製なども増えてきています。

日本のどこが先進工業国なのか、首を捻りたくなるような時もありますね。

かつては、東京近郊で工業が営まれ、そのエネルギーを原動力として日本全体が回っていました。

ですが、今ではもう都会に夢を見られる時代は終わっています。

逆に、インターネットなど情報流通システムの革命的な進化により「所在地が都会であること」の価値も下がってきています。

実際、アマゾン・グーグルといったネット企業の拠点がどこにあるのか、普通の人は誰も知りません。

そういった新しいシステムに立脚する企業は、都会の一等地に拠点や店舗を構える必要がありません。

これまでとは違う理屈で存在している企業ですから、そもそも立地云々は話題にも上らないのです。

こうして、都会であることが絶対的な価値であった時代は完全に終焉を迎えました。今ある都会の華やかさは、しょせん昔の名残・余韻に過ぎません。たまたま人口が多い場所だから便利な施設が多い、というそれだけの意味しか持ち得なくなったのです。

こうして一つの時代が終わると、流行・考え方には大きな揺り戻しが発生します。

都会で徹底的な管理のもと働くことが是とされた時代の後、田舎の昔懐かしい暮らしが是とされる時代に移り変わろうとしている。今が、まさにその過渡期なのではないでしょうか。

実際、一足早く経済的な斜陽を迎えたイギリスやアメリカでは、郊外で暮らすことが一種のステータスになっています。

一方、新興先進国として発展し、とうとうGDPで日本を抜き去った中国では都市部の驚異的発展の裏側で農村が貧困に喘いでいます。

経済的な急成長を終え、安定期・停滞期に入った社会においては、昔に立ち返ったスローライフが流行し、これから最盛期を迎えようとする社会においては、経済基盤たる都市が地方を置き去りにして偏った発展をしていくわけです。

恐らく、これから人口が減少する日本では農村の人手不足・過疎化がどんどん問題化してくるでしょう。

ゆくゆくは農村部への移住が標準的な選択肢の一つとして社会に広まっていくかもしれません。

かつての工業化・都市発展への反動とも思えるスローライフ・ブームは、まだ長く続いていくことでしょう。

カテゴリー: 田舎暮らしコラム

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