鎌倉文学館の設立

昭和50年には鎌倉文化人が集い「鎌倉文学史話会」が結成され、昭和58年には旧前田侯爵の別荘が歴史的建造物として鎌倉市に寄贈されたことをきかっけに、この別荘を鎌倉文学の象徴的記念施設にしようという気運が盛り上がり、各文化人や鎌倉市民有志の尽力によって昭和60年に「鎌倉文学館」として開館され、一般に公開されることとなりました。観光名所が数多い鎌倉の中でも、日本の近代文学に多大な貢献があった文学者の遺品や貴重や資料を閲覧できる名所として、日本文学に関心がある人なら、鎌倉文学館はぜひとも来訪をおすすめしたい施設です。

鎌倉にゆかりのある文学者は、この他にも「星あかり」の泉鏡花、「宗方姉妹」の大佛次郎、「源頼朝の世界」の永井路子、「蒙古来る」の海音寺潮五郎、「或る女」の有島武郎、「源九郎義経」の直木三十五、「鎌倉夫人」の立原正秋、「息子の青春」の林房雄、「在りし日の歌」の中原中也などなど、これらの名作を読めば、実に数多くの偉大な作家たちが、いかに鎌倉を憧憬の地としていたかが分かります。

最後に、鎌倉の大仏像の裏手にある観音堂に建てられている、女流作家・与謝野晶子の歌碑の句を紹介しましょう。

 鎌倉や 御仏なれど釈迦牟尼は 美男におはす夏木立かな

さまざまな議論が起きた句ですが、真夏の日差しを受けながらも威風堂々とたたずむ大仏様の尊顔について、浪漫派文学者であった与謝野晶子が、女性から見た率直な感慨を綴った一句のように思えます。

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